映画「フォレストガンプ ~一期一会~」から学ぶ南部訛りの英語と、描かれないアメリカ歴史の闇

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英語を聞き取りやすい映画として紹介されていたので、フォレスト・ガンプを観てみました。主人公のフォレストは知的障害者ということもあり、ゆっくり、はっきりと話します。

彼の目線で物語は進んでいくので聞き取りにくくはないと思いますが、とにかく南部訛りがキツイ!アメリカ南部や方言に興味のある方、留学予定のある方には良いかもしれません。

ただこの映画、英語はともかく、アメリカ史に沿って進んでいくので、アメリカという背景を知る上では興味深いです。

ちょっと、いや、かなり、ひねくれた構成になってはいるのですが・・・。それも含めてアメリカの闇を垣間見ることのできる映画です(笑)。

アメリカ南部訛りについて

日本でも同じだと思うのですが、一概に南部訛りと言っても地域や話し手の年齢によってだいぶ差があります。

その中でも共通しているのが、Southern Drawl(南部特有の引き伸ばし)。これが外国人にもいちばんわかりやすい南部訛りの特徴です。

北部出身と南部出身の女性が色々な単語で比較しています。南部の英語はねっとり絡みつくイメージ、母音を引き伸ばす傾向にあるのがよくわかりますね!

南部には独特の方言もあり、代表的なものはこのあたりでしょうか。

  • Ya/Y’all → You/You guys
    YouをYa、複数の人に話しかけているときに使うYou guysをY’allと言うのは南部の特徴です。
  • Buggy → Shopping cart
    ショッピングカートをバギーと呼ぶのが方言だというのはちょっと驚きでした。イメージは湧きますよね?
  • Coke/Soda → Soda/Pop
    南部の人は炭酸の入った飲み物はなんでもCokeと言う可能性があります。これはちょっと注意が必要かも(笑)Cokeと言われたからと言って、コカコーラを指しているとは限りません。ペプシかもしれないし、ドクターペッパーかもしれません。
  • Yonder → that way
    道を尋ねたとき、go yonderと言われたらgo that wayという意味。ニュアンスとしては短い距離に使う。over yonderと言われたら、距離があることを示します。
  • Ah-ite  → alright
    How are you doing?の挨拶に、I’m ah-ite(アイト、と発音します)と返ってきたらそれはalrightの意味。
  • I’m fixin’ to → getting ready to/preparing
    I’m fixin’ to~、これも方言とは思っていませんでした。準備をしているという意味です。

映画本編についての違和感

フォレスト・ガンプは感動的大作として有名ですが、これはアメリカ国外ならではの評価なのでは?!と思ってしまうほどに違和感のある映画でした。

物語はフォレスト本人が過去を回想する形で、バスを待つ人々に話しかけることで進行します。

フォレストは知的障害者で、いじめのターゲットに。そんな中彼を庇ってくれた女の子、ジェニーのことを、フォレストは一生をかけて愛し続けることになります。

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舞台は1950年代中盤~1960年代にかけてのアメリカ、アラバマ州。ベトナム戦争とヒッピーやロックンロール、ドラッグなどのカウンターカルチャーが描かれています。

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主人公は大統領であるJFK(ケネディ)、ジョンソン、ニクソン、それにジョンレノンなど時の人たちと会うことになりますが、この時代のアメリカで同じくらい有名で重要な存在であるはずのキング牧師が出てきません。

当時アメリカ全土で大問題であった黒人差別への反対運動公民権運動は、まったく描かれていません。

でも公民権運動は、実はフォレストの出身地、アラバマであったモンゴメリー・バスボイコット事件から始まっているのです。

これだけでも違和感のイメージはおわかりいただけると思います。

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更に主人公はベトナム戦争に行き、親友を亡くしますが、映画の中で敗戦のシーンはまったく描かれません。

映画評論家の町山智浩氏曰く「1940年代の広島を舞台に時代をなぞっていく作品で、原爆も終戦も描かれないようなもの」なんですね。

アメリカのタブー

アメリカ人にとっての苦い思い出、触れられたくない過去、最大のタブーであるのがベトナム戦争です。

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世界最強のはずだったアメリカが唯一敗戦で苦渋を味わったのがベトナム戦争。当時ソ連と冷戦状態にあったアメリカは、北ベトナムを支援していたソ連にこれ以上の力を持たせたくないがために南ベトナムを支援、北ベトナムを大空爆します。

ベトナム人だってそんな代理戦争に巻き込まれて黙っちゃいません。
現地のゲリラたちにとって戦場は自分達の庭であるジャングル。アメリカの予想を大きく上回った戦果を上げ、アメリカ国内でも反戦の声が大きくなったため米軍は撤退を余儀なくされました。

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フォレスト・ガンプでは、主人公は流されるままに軍に入りベトナム戦争へ送られます。

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一方ジェニーはストリップ・バーでボブ・ディランの反戦歌であるBlowing in the wind(風に吹かれて)を歌い、ヒッピーたちの反戦運動に加わり、カウンターカルチャーと称される「セックス・ドラッグ・ロックンロール」にはまっていきます。

感動的仕立てのプロパガンダ?(ネタバレ含む)

知的障害のために深く考えることもなく、ベトナム戦争で果敢に負傷者を救出し、勲章を受け、スポーツでも大活躍。死んだ親友との約束を守ってエビ漁を始めて大成功。大金持ちになるフォレスト。

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一方、実の父親から性的虐待を受けて育ち、裸で反戦歌をうたい、DV男に暴力をふるわれ、自殺を考えるほど追い詰められて最後にはエイズで亡くなるジェニー。

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平和を訴えながら恋人に暴力を振るうDV男に、中国っていいね~なんてアホなことを抜かすジョン・レノン。

ちょっとちょっと~、
なんかこれって、壮大なリベラル批判と女性差別なんじゃないの~・・・?
黒人差別問題からは全力で目を背けているし、保守派ばっかり「うん、うん、そうなんだよ」と思っていそうな映画だな~・・・

というのが個人的な感想でした。

ママと神とアップルパイ

監督であるロバート・ゼメキスはインタビューで、フォレストはアメリカのあるべき姿、ジェニーはカウンターカルチャーの象徴だと話しています。

フォレスト・ガンプは「ママと神とアップルパイを信じるための映画である」んだそうな。

ママと神とアップルパイというのは古き良きアメリカの象徴。黒人や女性を認めず、革新を排除するアメリカ・・・。”ママが作る”、”家庭の”アップルパイ。

それを「アメリカのあるべき姿」と信じる保守派の人々も、現在進行形で、たくさんいるのです。

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キリスト教では「知恵=悪」なんですね。

アダムとイヴが知恵の実を食べて堕落したように、知恵があれば神を疑ったり、神を凌ごうとしたりする者が出てくる。

だから知恵を持たず、ただアメリカという神の国に従っていれば良い。フォレスト・ガンプという映画からそんなメッセージを感じてしまうのは、きっとわたしだけではないはずです。

自由の国、革新の国というイメージのアメリカにも実は色々な人がいて、光もあれば闇もある。アメリカン・ヒストリーの重さを突きつけてくる映画でした。


予告編&本編300円でこちらのYouTubeからご覧いただけます!

追記

フォレスト・ガンプと同じ時代を描いた映画「大統領の執事の涙」をあわせて観ることをおすすめします!
フォレスト・ガンプの描いた白人保守派の目線と、大統領の執事の涙で描かれた黒人たちの思い。
対をなすふたつを観てやっと、この時代の背景やフォレスト・ガンプに隠された闇を理解できるはずです。
「大統領の執事の涙」レビューはこちら

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