移民国家、アメリカ
私はアメリカの永住権(グリーンカード)を持つ身です。
早いところ、移民です。
日本では、移民なんて一握りですが、アメリカは驚くほどの「移民国家」。
アメリカには白人と黒人しかいないと思ったら大間違いです!
中南米、アメリカ、アフリカ、アジア・・・。
色んな国から来た人々が、重要な労働力となって、アメリカ社会に貢献しています。
そして地元アメリカ人もまた、そんな移民を生活の一部として普通に受け入れています。
“nanny” という仕事
今回ご紹介したいのは、移民女性の多くが従事している、“nanny” という仕事。
“nanny” とは、子守の人のこと。
アメリカに来ると、南米系の女性が人種の違う子どもの乳母車を押しているシーンをあちこちで見かけます。
ちなみに、”babysitter(ベビーシッター)” と違うのは、”nanny” の仕事内容。
アルバイト的に「ちょっと子どもの面倒を見る」というベビーシッターとは異なり、”nanny” は子どもの面倒から家事全般も行い、時には住み込みで働くなんてことも。
その “nanny” マーケットが今、アメリカ都市部でかなりヒートアップしています。
“nanny” が必要とされるアメリカ社会=共働きが必須な社会
両親が共働きというのが当たり前のアメリカ。
女性は仕事を持っていて当然だし、主婦であることは怠け者、才能がない証拠、恥!とまで思っている人までいるくらい。(この件は別の時に詳しく!)
日本では「仕事をしたいから」と子作りを躊躇する女性もいますが、アメリカではそれは理由にはならない様子。
でも、男女平等という意識だけが女性の社会進出を後押ししている訳ではありません。
“nanny” を雇わなければならないほど、共働きを強いられるアメリカの社会制度も、決して無視できないのです。
アメリカは医療費が馬鹿高く(初診料200ドルなんてざら!)、社会保険制度が日本のように充実していません。
日本みたいに国民健康保険がないので、医療保険の問題は深刻なんです。
だから、健康保険の付与されるフルタイムで働くことにみんな必死になります。
その結果、都市部の保育園は働く親達の子どもでパンク状態。
こういったアメリカならではの文化や社会のあり方が、”nanny” をなくてはならない存在とさせていったのです。
アメリカ “nanny” 事情
“nanny” を雇いたければ、”nanny” エージェントに連絡して、派遣してもらうというのが通常のパターン。
ちなみに “nanny” を雇う際の相場は、時給$15~18。
この時点ですでに保育士よりも給料が高いのですが、それが人気 “nanny” となると、倍以上。
超人気 “nanny” の中には、年間2千万円近く稼ぐ人もいるとか。
正に前代未聞の “nanny” ブーム。
ただぶっちゃけた話、”nanny” は子守と言うくらいだから、本来は社会的地位がない、リスペクトされない仕事。
“nanny” の多くは学歴なんてない上に、言ってしまえばアメリカに移住してきた「出稼ぎ外国人」。
それでも働くアメリカ人パパ・ママたちが彼らをこぞって雇うのには、更なる理由が。
それが、彼らの外国人という立場。
すなわち、アメリカで最も注目されている中国語、スペイン語は、”nanny” の母国語であることが多いんです。
面倒を見てもらうついでに、「うちの子どもには、中国語で話してね」と、自分の子どもをバイリンガルに育て上げようとしている訳です。
なんだか私はこの “nanny” 産業のヒートアップ振りに、子どもはもっと親からの愛情を必要としているんじゃないか、と勝手に心配になってしまいます。
でも、それよりも前に気付かされることが一つ。
移民という労働力になかなか手を出せない日本人の心情
アメリカは、子どもがいる女性でも働ける環境があって良いな~、と表面的な憧れをアメリカに感じるかもしれません。
でも、ビザの問題云々抜きにして、アメリカと同じ “nanny” 産業を今の日本に導入できるでしょうか。
自分の子どもを近隣諸国から来た外国人に預けて、悠々と「子どもの将来のために “nanny” には英語で喋ってもらいましょう」なんて言える親が日本にいるでしょうか。
もっと「そもそも論」を言ってしまえば、外国人労働者に対して、まだまだ日本人はアレルギーを持ってやいないでしょうか。
日本で今懸念されている、女性の社会進出と少子化の問題は、もしかしたら外国人の労働力を借りることによって解決の糸口が見えてくるかもしれません。
それでも、「それは良い案だ!」とは言えないのが日本人の心情。
自分の子どもを預けられるほど移民を信用するなんて無理、というのが本音のところです。
子どもがいるけど働きたい、でも働いたら子どもの面倒を見る人がいない、じゃあ移民の “nanny” を雇って、ついでに子どもをバイリンガルにしちゃいましょ!とサラッと動けちゃうアメリカ人。
そんな楽観的且つ大胆で、たくましいアメリカ人が羨ましくもあり、そうはなれない日本人の律儀さと閉鎖的な心模様を痛切に感じさせられた、アメリカ “nanny” 事情なのでした。
(ニューヨークタイムス紙に、”nanny” について書かれたコラムを見つけました。比較的読みやすいので、こちらも併せて読んでみてください!The Best Nanny Money Can Buy)